静かに消えゆく馬たち
北海道東の無人島の馬たちの美しい写真集
北海道東の無人島の馬たちの美しい写真集
北辺の孤島にたたずむ馬の姿は、
燃え尽きる寸前のロウソクの
灯のように美しかった。
帯広競馬場でも写真展が開催されていましたので、ご存知の方もいらっしゃるでしょうか。
かつて、労力として人と共に暮らしていた馬たちがいたユルリ島。無人島となり、馬だけが残された島では、今は2頭の牝馬が残るのみとなっています。
人が暮らした跡、そこにいた馬たちの跡が、美しく撮られた写真集です。
見返し(表紙をめくってすぐのページ)の紙は馬糞紙。岡田さんは「馬そのものの肌のよう」と表現されています。
写真の品質にはもちろん、後書きに添えられた英訳の1文字1文字まで丁寧にチェックをほどこされた、渾身の1冊です。
「北の孤島をめぐる僕の旅も、ようやくこれで完結する。」—(写真家・岡田敦) ー
日本の本土最東端、根室半島の沖合に浮かぶ周囲8キロメートルの無人島、ユルリ。
この島が馬だけが生息する上陸禁止の無人島となった背景には、開拓から先の大戦を経て現在へと続く北海道の歴史が深くかかわっている。ー(本文より) 人間が住むことをやめてから半世紀以上、馬たちだけが暮らす「幻の島」を写真家 岡田敦が10年以上にわたり撮り続けた、消えゆくものたちの姿と風景を記録する写真集。
昆布漁の干場を求め、人々が馬を連れてユルリ島に渡ったのが1950年のこと。
20年余りののち1971年には最後の島民が島を離れ、ユルリ島は再び無人島となる。
2006年、かつての島民たちの高齢化によって馬の管理が困難になったことからユルリ島から雄馬の引き上げが実施される。
それによって島の馬はゆるやかに絶えることが運命づけられることとなる。
2011年の夏に、岡田がはじめて島を訪れた際に12頭を数えた馬たちは、次第にその姿を消していき、2024年には2頭を残すだけとなった。

岡田敦さん
写真家・芸術学博士。1979年 北海道生まれ。
大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。東京工芸大学大学院芸術学研究科博士後期課程修了。
富士フォトサロン新人賞(2002年)、木村伊兵衛写真賞(2008年)、北海道文化奨励賞(2014年)、東川賞特別作家賞(2017年)、JRA賞馬事文化賞(2024年)を受賞。
主な写真集に『I am』(赤々舎/2007年)、『ataraxia』(青幻舎/2010年)、『世界』(赤々舎/2012年)、『MOTHER』(柏艪舎/2014年)、『安田章大写真集 LIFE IS』(マガジンハウス/2020年)、『エピタフ 幻の島、ユルリの光跡』(インプレス/2023年)がある。作品は北海道立近代美術館、川崎市市民ミュージアム、東川町文化ギャラリー、東京工芸大学写大ギャラリーに収蔵されている。
《商品概要》
サイズ:B5横 総頁:304頁 製本:布貼り上製本
発行:青幻社
みんなのお買い物レビュー
晴日ママ様 | 投稿日:2025年05月02日 |
おすすめ度:
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届いたその場でページを繰ると同時に、馬たちの姿に釘付けになる。気づけば涙が頬を伝っていた。何にも抗わず、ありのままを受け入れ、人間によって連れて来られた地で命を全うしているユルリ島の牝馬たち。こんな命のドラマが「ある」ことを「あった」と過去形になる前に知ることができ、著者の岡田敦さんには心からの感謝を贈らせていただきたい。
物価高騰で家計は火の車だが、思い切ってこの写真集を購入して良かった。世界は今、何を信じて良いのかわからなくなるような出来事ばかり。だからこそ、泣けてくるのだろう。最後の一頭が果てるまで変わらぬ営みを続けるであろう馬たちのドラマに。 |